GPUのリフローとリボールの作業はなぜ無駄なのか?

GPUチップ

この記事は 10 年以上前に、nvidia 5xxx-8xxx シリーズおよび同様の AMD チップ向けに書かれたものです。
現在、状況が変化しているため、ここで小さなアップデートを行います。

 

リフローとリボール後の修理品を弊社で取引する機会が多く、依頼者の方々には説明しましたが
今回この場を借りて細かく説明する事にしました。

グラフィックチップのリフローとリボールの作業はなぜ無駄なのか?

GPUチップ図式 画像1
GPUチップ図式 画像1

 

 

 

 

 

 

画像1をご覧下さい。こちらは通常のBGAチップの構造です(GPUを含む)。
リフローとリボールの作業を行っている方達は半田クラックはチップケースと
マザーボードの間の問題だと考えていますが(画像_#1)
本当の接続不良の問題はシリコンダイとチップケースの間が原因です(画像_#2)
なのでリフローとリボールの作業では修理出来ません。チップ交換のみ修理が出来ます。

画像2 電子顕微鏡によるNVIDIAのGPU写真
画像2 電子顕微鏡によるNVIDIAのGPU写真

リフローとリボール後、なぜ動作可能なのか?

リフロー、リボールをする時、高温でチップの素材が膨張し、(マイクロBGAボールの下のシリコンダイも含む)
そして接続を直しますが、一時的です。この作業で直ったと思われる動作の期間ですが、様々です。数時間から数ヶ月です。
各状況で異なり、初めのダメージやチップのタイプなど(異なるチップにより、症状も異なります)使用方法次第です。
例えば、1日1時間のみ使用している場合、長い間の使用が可能ですし、もし1日10時間毎日使用する場合、比較的すぐ再発します。
また、リフローとリボール自体は何度も出来ません、数回後、全く動作しなくなります。

注意

修理作業の経験がない方や知識のない方がこのリフロー、リボールを行うとマザーボード自体を破損する可能性が高いです。
なぜなら、慎重な作業が必要で、プロファイルの決められた温度をプロのIR-半田機械を使用しての作業が必要になります。
ヒートガンや台所オーブン(Youtubeから)では使用出来ません。もし使用した場合、急激に高温になりプロファイル通りの温度を保つ事が出来ません。
そして、マザーボードが必要以上に高温になり、曲がってしまい、ヒビが入り、断線し、焦げてしまう場合もあります。こういった症状が出た場合、再修理は不可能になってしまいます。
こういった事で、リフローとリボールの作業は時間とお金が無駄で修復不可です。

 

GPUのリフローダメージ
GPUのリフローダメージ
GPUのリフロー焦げ
GPUのリフロー焦げ

 

 

 

 

 

 

 

 

↑↑↑これらはオーブン使用後の画像です。チップ、カードはポップコーンの様な泡状に歪んでしまいました。

 

マザーボードをヒートガンで使用した例
マザーボードをヒートガンで使用した例
基板のGPUをヒートガンで使用した例
基板のGPUをヒートガンで使用した例

 

 

 

 

 

 

 

 

↑↑↑SONY-FZのマザーボードをヒートガンで使用した例です。焦げてフラックスも焼けてしまっています。コネクタも黒く変色しています。また、Intelノースブリッジも焼けてしまっています0_Oマザーボードは破棄するしかありません。

 

なぜビデオチップが不都合になるのか?

温度の振動が不都合の原因です。
ビデオチップは熱い部品の一つです。
使用時、ビデオチップは熱くなります(負荷をかけると稀に100℃まで上がります)
電源を落とすと温度は下がります。
それを毎日繰り返します。時間が経過すると段々と接続不良になっていき故障します。

クーリングが十分でないと、不都合も早く現れます。
また、製造上、元々クーリングシステムが弱い場合もあります。
その他、不良品のチップの場合もあります。こういうチップの場合、100%故障します。
また他の原因もあります。

半田クラックの原因では、ありませんか?

もちろん、半田クラックの原因、チップとマザーボードの間の場合もあります。
私の経験上、2-3%ほどの原因でありました。

様々なBGAチップ交換済み
様々なBGAチップ交換済み

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、ご質問がありましたらこちらまでお問い合わせ下さい。なるべく回答します。

 

こちらで弊社のビデオチップの交換作業の様子です。

修理 DELL XPS M1210 (PP11S) – ビデオチップ不具合

修理 Toshiba Qosmio WXW/79GW (PAWW79GLN10W) 画面に太いライン

また、グリースの使用方法です。

グラフィックボード・ビデオカード(グラボ)のメンテナンス

お問い合わせ

 

新しいチップは ダイの下で BGA を使用せず、その代わりにメーカーでは超音波溶接を使用します。
そのため、ダイの下のはんだクラックはもう問題ありません。 しかしダイ自体は相変わらず壊れています。

技術プロセスが小さくなったため、1mm四方の中にトランジスタが配置されることが多くなりました。
また、新しいチップは非常に熱いです。 これにより、トランジスタが限界まで動作し、頻繁に破損することになります。

もちろん、チップが壊れたり、シリコンダイ内の一部のコアやブロックが壊れたりした場合は、リボールしても役に立ちません。
したがって、実際の問題を診断せずにリボールを行うことは、依然として良いことではありません。 PCやグラボが動かなくなる原因は、はんだクラック以外にも多くあります。

しかし場合によっては、やり直しが必要です。
そしてリボール率は10年前よりも上がっています。

24.9.2023